鬼平犯科帳〈2〉 (文春文庫)



鬼平犯科帳〈2〉 (文春文庫)

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時代劇小説ではなく……

「悪を知らぬ者に悪を取り締まれるか!」
この言葉が、凄い印象に残っています。
「妖盗葵小僧」、「蛇の平十郎」では、情け容赦なく取り締まる鬼平も、「女掏摸お富」の様に、厳しいながらも情を見せる鬼平の魅力に、酔いしれます。
鬼平は、時代劇小説ではありません。
200年前の日本を舞台にした、
「ハードボイルド小説」
です。
たまらなくお腹が空く小説

 物悲しい憂き世で人情味の溢れるストーリーが面白い小説ですが、同時にたまらなくお腹が空く小説です。作中にはちょっとしたストーリーテリングの小道具として、餅だ鍋だと食べ物が出てくるのですが、その描写が一々美味しそうなんですよね。

 例えば、2巻の第1話「蛇の目」は鬼平と大盗・蛇の平十郎の対決を描いた話ですが、最初の二人が偶然そば屋で擦れ違う戦々恐々とシーンでも、その直前には天麩羅そばのことが語られ、思わず涎が零れます。ちょっと小腹が空いてたりすると、何かしらお腹に入れたくて堪らなく。キツいなあ。ホンマ。

 『鬼平犯科張』の電子書店もあるそうですが、そのサイトには「鬼平舌つづみ」なんてコーナーもあって、作品関係のうまいものを再現して紹介してるそうです。食べ物は鬼平に欠くことのできない特徴なんですね。
時代小説の妙味

「ほう・・いつの間にか、空が高くなった。よう晴れていて汗もかかぬ。ひんやりとしたものが座敷内にもただよっているな。もう,秋か・・・・よし行けい。おれはしばらくここで昼寝する」(谷中・いろは茶屋 第2巻P89)

毎年初秋になると決まって鬼平の、この台詞を思い出す。人それぞれ、このシリーズに関しては好みもあるだろう。あえて一作、となれば、第二巻所収のこの話を挙げねばならぬ。何故か?鬼平の、いや、池波正太郎の善悪観が述べられているからである。「人間というやつ、遊びながらはたらくいきものさ。善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ。これが人間だわさ」)

至言である。



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